東京屋敷林ネットワーク見学会
去る4月28日(土)、東京屋敷林ネットワークの定期総会が開かれ、その後に見学会が開かれました。東京屋敷林ネットワークは、屋敷林をテーマとした全都的なネットワーク組織です。都内で存続の危機にさらされている貴重な屋敷林について、会ではその公共的な価値を広く伝えるとともに、土地所有者や協力者等のつながりをつくり、保全を進める活動をされています。年に数回の見学会を開催しており、今回は国立市にある「一橋大学キャンパス緑地」を訪れ、「一橋植樹会」の津田正道会長と理事のみなさんがご案内くださいました。
一橋国立駅南口から一橋大学に至る大学通り。校内の樹林がまちの風景となっている
一橋大学の図書館。美しいロマネスク様式の校舎
東キャンパスの入口付近
一橋大学は、関東大震災を機に、都心から国立と小平に移転しました。国立キャンパスは移転後今年で88年になります。キャンパスに入って驚いたのは、想像以上に広大な雑木林が残っていることでした。もともとは武蔵野の雑木林だった土地です。コナラや竹林、林床にはキンランが咲きイチリンソウの群落があり、市街の大学内とは思えない風景がありました。
校内に広がる武蔵野の雑木林
絶滅危惧種のキンランも
しかし、二次林としての手入れがなされないまま、高齢化した雑木林は、アカマツをはじめ枯れ木が目立ちってきてしまいました。そこで昭和42年、当時の増田学長が植樹運動を提唱し、募金を募る運動が始まり、その数年後に「一橋植樹会」が設立。それから30年にわたり、植樹活動が続いたそうです。しかしそれだけでは維持が難しいということで、15年ほど前より、会員と学生による保全活動が始まります。活動にあたり、平成16年には大学と一橋植樹会とで「緑地基本計画」を策定、ゾーンごとにきめ細かい管理目標と計画が定められました。
一橋大学国立キャンパス「緑地基本計画レビュー」
この計画が素晴らしいのは、策定から10年ほど経った昨年、計画が目標を達成しているかどうかの『レビュー』がなされたことです。緑地管理の仕事でもなかなかできないことを、ボランタリーな力で実行されているのは、なかなか他には例がないことと思います。
この計画を策定し、保全活動を進めるにあたり、大きな力を注いでくださっているのが、東京農工大学名誉教授の福嶋司先生です。一橋植樹会の顧問として、今回の見学会でも、ゾーンごとの植生を詳しくご説明くださいました。
ゾーンごとの植生管理目標を説明される福嶋司先生。ここはウグイスなど野鳥のため、ササなど低木を残しているエリア。
一橋植樹会では、月に1度、保全活動を行っていますが、なんと、多いときでは200人前後の人数が集まるそうです。主力は現役の学生たちといいますから、驚きです。もともと一橋大学はコンパクトな大学で、学生やOBのつながりが強く、その校風がこういった活動にもよい影響があるとのこと。当日は、ノコギリを持ったこともない学生たちが、男女問わず参加し、学生同士やOBとの交流を楽しんでいるそうです。
会の会報と学生向けのチラシ
熱心に活動について説明される津田正道会長。商社マンとして海外勤務が多かったそう
緑を通して世代を超えてつながる場を作り、それが校内、ひいてはまちのみどりの保全につなげている会の活動に、ほんとうに感銘を受けました。このような見学会を企画くださった東京屋敷林ネットワークと、現地案内くださった一橋植樹会のみなさま、貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
林内で虫を探す親子。次世代に残したい貴重なみどり